VC-8E

大阪府枚方市の金森様から VC-8E をいただきました(12/1/04):
「サテンのページ拝見しました。私も70年代のころはサテンの大ファンでページを全部読ませてもらいました。」(27 Nov 2004)

SATIN 独特のアーマチュア(カンチレバーとのジョイント部分)が見え,針ホルダーの外見・寸法も M6-45, M7-45 と同じで,実際に交換できました(下記のように SONY は SATIN の OEM であることを否定していますが).針ホルダーの SONY 文字が橙色の場合は楕円針(E)というのも,当時の SATIN の分類です.V-45U (M6-45 の TRIO OEM) は出力ピンの面に SATIN と書いてありますが,VC-8E はどこにも SATIN とは書いてありません.ビリつきについて調べてみました.

つい最近(12/11/04)まで M6-8E の存在自体を知らなかったので,時代やモデル名から M8-45E の OEM 品と思い込んでいました.しかし,モデル名からは M6-8E の方が自然ですし,当時 32,000 円と高価で 1mV しか出ない M8-45E の OEM 品というのも不自然に思えてきましたので,SONY にスペックを問い合わせました.針圧 0.5〜2.0g,出力電圧 4mV,周波数特性 10〜25kHz,当時の価格 13,000円でした(20 Dec 2004).CBS STR-100 Side A, Bands 6A and 7A (1000-Hz Reference Tones) を使って実測した VC-8E の出力電圧は 3.5mV (出力端子をオシロスコープで直接観測して 5mV 0-Peak)で,M6-8E の 3.5mV と一致します.さらにその後,M7-8E もあることを知りましたが,スペック・価格からは M6-8E の方が近いです.ただ,ボディーの成形は,出力ピン側から見て左右の稜(辺)が角張っているので,M6-8E ではなく M8-45E と同じです.SONY の特注モデルでしょうか?

その後(10/16/05)河口無線の近藤様から M6-8E をいただきましたので,コイルのインダクタンスを測定してみました.VC-8E は 26/22μH,M6-8E は 24/22μH でしたので,コイルの巻数は同じと考えられます.(自作メータなので精度はあやしいが相対値は比較可能.測定電流は電圧換算で約 5mV.)

詳細を見つけました(7/9/07):SONY MCカートリッジVC-8Eの仕様オーディオの足跡
VC-20(下記)を調べていて見つけました(10/7/08):Sony VC-8E on TVK

VS-8E, VC-1500Eヘッドフォン近代博物館-別館)(12/10/10)

ブラジルの Andre 様が VC-8E のボディー内側に SATIN のロゴが刻印されている画像とアーマチュア・コイルの画像を送ってこられました:
"it's obvious that the capsule is a Satin even though Sony says it isn't, but inside the capsule, there is the Satin symbol, follow the image. Putting together what you wrote, this Sony cartridge is definitely a derivative of the SATIN M8-45." (2024/03/28)
訳:いくら SONY がちがうと言っても写真の小容器が SATIN であることは明らか,画像をよく見れば内側に SATIN のしるしがありますよ.あなたが書いたことと合わせると,この SONY カートリッジは確実に SATIN M8-45 の派生品です.
VC-8E (拡大)パンタグラフ型アーマチュアのページの M6-8C

VC-7P

Replacement Turntable Needles For SONY Cartridges Listed By SONY Cartridge Number に VC-8E と共に載っていて,針は VC-8E と同じ型番 Needle 626-D7 です.これは 2006 年頃に見つけ VC-8E の項目として記載していましたが,オークションで存在が確認できましたので左の画像を掲載し独立させました.(10/12/14)

VC-1500E

高性能ムービングコイル型カートリッジVC-1500E ¥28,500

ソニー商品のしおり No. 14
74 年 2 月

  • 高級ムービングコイル型には珍らしい4.5mV
    の出力
  • 針交換機構に起因する音質の劣化を排除す
    るため,針交換はできません.針先磨耗の場
    合は実費で交換します
  • チャンネル・セパレーションが1KHzでも25dB
    以上のすばらしさ,高域の10KHzでもセパレ
    ーション特性の劣化はなく,カートリッジ振動
    系の良さと音質の素直さは抜群

Vinyl Audio 様(vinyl はビニール,つまりレコード)から VC-1500E の情報をいただきました(17 Sep 2008):

VC-1500E の針先付近のカバーを一部外してみましたところ、カンチレバーを支持するパンタグラフが確認できました。これで VC-1500E は SATIN の OEM であると言う説は立証されたように思います。
添付していただいた画像
(左は 1/2,右は 1/8 に縮小)
参考:オークションに出品されていた
VC-1500E.針カバーは M-14 以後の
ものに似ていて,出力ピンは一列.

「パンタグラフとカンチレバーの接合部に、ゴム状のものが付いていて、両者を固定しているようにも見えます」ということですが(ゴムダンパーとは違います.下記参照),そのため針交換ができなくなっているのでしょう(と言うより,針交換をできなくした理由は別にあると思いますが).

後日,以下の情報もお寄せくださいました(21 Sep 2008):

1970 年の STEREO SOUND No16 AUTUMN 291 項の「話題の新製品」に、TTS-4000 や TA-2000F と一緒に紹介されています。

3mV の出力を持った MC 型カートリッジ。帯域 10Hz〜25KHz、セパレーション 30dB、 チャンネルバランス 0.5dB など良好な特性を持ち、MC 型ながら高出力なので、 トランスなどが不要であり、使いやすい。針圧は適正 1.5g、針交換は可能だが、 針交換代金にて新品と交換するシステム。発売は 9 月 21 日。(柳沢)

同誌 253 項の折り込み広告に、

音質劣化や経年変化の原因となるゴムダンパーは使用していません。 針交換機構に起因する音質劣化を排除するため針交換は出来ません。 針先の磨耗した時は実費で新品と交換いたします。 高性能でありながら 4.5mV の大出力を持つ使いやすいカートリッジです。 10,000Hz でも 30dB のセパレーションがとれるすばらしさです。

となっており、出力は 4.5mV が正しいようです。

パンタグラフとカンチレバーの接合部に付いているゴム状の物質:SONY VC1500 その後(Vinyl Audio 様のブログ)

「ゴムダンパーは使用していません」も SATIN の OEM と言っているようなものですが,ゴムダンパーを初めて追放したのは M-15 で,M-11 にその改良を加えたのが New M-11 です.ちなみに,M-15, M-15E の発売は 69 年 12 月です.以下,OEM と判明したことを踏まえて,以前の内容(下から2番目の項目の大半)を書き直しました:

ラジオ技術臨時増刊ベスト・ステレオ・コンポ '72 に VC-1500E のスペックが載っています(商品のしおりには上の画像の文だけ).周波数特性:10〜25kHz セパレーション:30dB (1kHz, 10kHz) インピーダンス:35Ω (1kHz) 針圧:0.7g〜3g (適正 1.5g) 自重:7.2g 価格 28,500 円ですから,出力電圧・周波数特性・セパレーション(10kHz)・針圧からは New M-11 に近いのですが,インピーダンスは New M-11, M-14(50Ω)と M-15(20Ω)の間で,価格は New M-11 の 19,800 円(同誌に掲載)どころか M-15E の 26,000 円(同誌に掲載)より大幅に高いので,VC-8E 以上に SONY の特注モデルでしょう.

以下,以前の内容です(少し書き直しました):

SONY のカートリッジが SATIN の OEM 品だったという話を SATIN の社長さんから伺いました.その時すでに SONY のカートリッジは XL シリーズでしたが,VC-1500E という高出力電圧 MC があったことをカタログや PS-2510 の取扱説明書などで知っていましたので,ずっと VC-1500E と思い込んでいました.このページを作成するにあたって(サテンの社長さんは亡くなられましたので)ソニーに問い合わせました:
商品のしおり No. 14(74 年)に載っている VC-1500E は,サテン(SATIN)の OEM 品と聞きました.サテンのオリジナルを知りたいのですが,VC-1500E の価格 28,500 円と出力電圧 4.5 mV に相当するものはありませんし,針交換ができないことと,チャンネル・セパレーション(25 dB at 1 kHz)がサテン(30 dB at 10 kHz)に比べて悪いので,他のメーカかもしれません.年代的には,M-11E, M-15E, M-14E で,出力電圧からは M-11E(4.5 mV)ですが,価格が高すぎます(M-11E は 19,800 円)し,価格からは M-15E(27,000 円)ですが, 出力電圧が合いません(M-15E は 2.5 mV).ほんとうにサテンですか?また,オークションに VC-8E というものが,M-14 と同構造と謳って,出品されていましたが,外見から M8-45E(65 年)のように思います.詳しいカタログがあれば見せてください(特に VC-8E はオークションで初めて知りましたし,他にもサテンの OEM 品があるのではないでしょうか?).
に対するソニーの回答(23 Jun 2003)は,「サテン様のOEM製品ではございません」「カタログのご用意もございません」でした.再問合せ:
ソニーのカートリッジがサテンの OEM 品という話はサテンの社長さんから直接伺ったのですが,その時は型番まで聞いていなかったのと,VC-1500E しか知らなかったので,ずっと VC-1500E と思い込んでいました.ところが,オークションにソニーの VC-8E がサテンの M-14 と同構造と謳って出品されていました.サテンの社長さんは亡くなられたので,ソニーに問い合わせた次第です.VC-8E は,オークションの写真と,その後調べた年代から(型番も),サテンの M8-45E に間違いないと思います.また,VC-1500E の別の写真では4本の出力ピンが一列に並んでいます.この特徴と MC で 4.5 mV もの高出力を持つものは,サテン以外にないと思います.お手数ですが,もう一度ご確認お願いできませんでしょうか?
についても同様の回答でしたが,型番も共に 8 ですし,Audio Magazine 誌の review の年からも,VC-8E は M8-45E に間違いないと思います.

VC-1500E も,4.5mV もの高出力 MC で出力ピンが一列に並んでいるものは SATIN 以外にないと思うのですが….型番からは M-15 のような,あるいは,M-15 がベースになった特別のモデル?

大阪日本橋のアサヒステレオセンター(ASC)さんに VC-8E が展示(非売品)されています.ASC はサテンを初期に紹介されたショップだそうで,他にも M5-45(内部構造が見られます)など,いろいろとありましたので,また情報収集してきます.

VC-20

VC-20 自体はじめて知りましたが,78 年 10 月発売のマイクロ・システムコンポーネント FALCON GG-20F(ファルコン 20F)のステレオプレーヤーシステム PS-20F に付属するカートリッジと思われ,SONY ES REVIEW Vol.33 別冊(新製品資料)には,MC 型(ヘッドシェルと一体),周波数特性 10Hz〜35kHz,出力電圧 0.3mV(1kHz, 5cm/s, 45°),針圧(最適針圧)1〜2g(1.5g),交換針 ND-20G,自重 19g と記載されています.(10/6/08)
下記のサイトの画像が
見られなくなりましたので,
オークション出品画像より
(4/21/12)
(1/4 に縮小)針先近辺(1/4 に縮小)アーマチュア近辺
出力電圧が SATIN にしては低いので(誤植の可能性もあると思い),SONY に問い合わてみました.他の規格も含めて上記と同じ値で,上記の他に,セパレーション:20dB 以上 1kHz,針先形状:0.6 mil 円形,単体発売はなく,針は(株)ナガオカトレーディング(http://www.communet.co.jp/shop/nagaoka/)で販売ということでした (10/7/08).セパレーションも SATIN にしては良くないですね.ちなみに,GG-20F の当時の定価は 230,000 円(ES REVIEW).

ちょっとDCなオーディオのページ」様から VC-20 の出力電圧の情報をいただきました(30 Nov 2009):

VC-20の出力電圧は0.3mVに間違いありません。実際に使ってみますと、DL-103とほぼ同程度の出力であることが判ります。

同時に,「サテン様のOEM製品ではございません」という SONY の回答(上記 VC-1500E の項目)についてのご見解や VC-20 の針についての情報もいただきました:

私の推測ですが、SONYとしては、SATINに「機構部品を注文した」だけで、あくまで自社の製品である、ということなのではないでしょうか。SATINに同等の特性をもつ製品が存在しないのは、あくまでSONYの仕様にもとづいて製造した部品であって、《中略》。また、VC-20の筐体の形についてはまさしくSONY製ですし、このような場合にはOEMという言い方はされないように思います。

ちなみに、交換針ND-20Gですが、スタイラスチップは透明(つまりダイヤ)です。ところが、もとから付いていたものはチップが黒く見えます。汚れを落としても黒いので、こちらはダイヤではなさそうに思えます。貴兄のサイトで紹介されているSONYからの情報によると、「0.6mil円形針」だそうですが、ナガオカレコード針販売サイトのほうには「ダイヤモンド楕円針M」と載っています。《中略》

それから、カンチレバーの根元には、粘度の高いシリコンオイルと思われるものが塗られています。最初、何かの汚れかと思ったのですが、新品未開封で入手した交換針も同様でしたので、もとからの仕様でしょう。これはパンタグラフとの接触部に対しての処置ではなくて、あくまで根元に施したもののようです。

添付していただいた
交換針 ND-20G の画像
(左は 1/4 に縮小)
生産時期で中のパッケージが少し異なります。外箱は同じですが。左の、交換針を支持する透明なパーツが備わるケースが古いようです。右のは下部ケースにじかにネジ留めするように合理化されています。手前は交換作業用に同梱されているミニドライバーです。

OEM の件については,確かにボディーや出力電圧などのスペックを考えると SONY 製で,SATIN の OEM ではないという理解になるのでしょうね.そうすると,発電機構だけが SATIN 方式で,針はカンチレバーの根元を板バネで固定する 75 年以後の SATIN 方式ではなく,完全に SONY の設計なのでナガオカでも製造できたということでしょうか.VC-1500E もこの意味では SONY 製ということになるのでしょう.さらには,VC-20 の針はネジ止め(75 年以後の SATIN は磁力)で,VC-1500E は針交換できませんね.しかし,VC-8E はどう見ても SATIN 製でしょう,SONY さん.


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