なぜ、0.001ミクロン(ミリミクロン)レベルの再生が必要なのか。
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●音楽は、時々刻々と千変万化する、大きさと周波数とが異なる無数の周波数成分から成り立っています。最も大 きな値の異なった周波数の成分の数に比べて、その大きさの1/10であるそれぞれ異なった周波数の成分の数は、大ざ っぱにいって10倍も多くあります。そして、最も大きな値の周波数成分の1/100くらいの大きさの値をもつ、それぞ れ異なった周波数である成分の数は、100 倍もの数がもとの音楽に含まれており、このようにして、1/1000の大き さのそれぞれ異なった周波数をもつ成分は、1000 倍もの数が含まれています。 このあたりの音のレベルが レコ ードに録音された音の雑音レベルですが、人間にとって意味のある音は、その雑音レベルより更に1/10〜1/30も小さい 音でも聴くことができるので、そのようなレベルの大きさのそれぞれ異なった周波数をもつ周波数成分の数は、 10000 倍から30000 倍も多くあります。このように、音楽のそれぞれ異なった周波数の成分は、圧倒的に小さい値 のものが多いのです。 ●一方、レコードの溝の最大振幅は 30ミクロン(0.03mm)であり、この1/30000が実は 0.001ミクロンなのです。 ●ところで、原子の大きさは大体0.0001ミクロンですから、この 0.001ミクロンと いうのは、原子が10個しか並ばないという極微小なのです。レコードの雑音レベルの振幅である0.03ミクロンです ら原子が 300個しか並びません。レコードは高分子材料でできていますので、すくなくとも材料分子の1個の厚さ の段差を識別できるカートリッジでなければ、音楽をまともに再生することができない、ということはおわかりい ただけると思います。 | ||||
サテンM―117カートリッジのすべてのメカニズムは、レコードの材料分子一個の段差をもピックアップしなけれ
ばならないという、厳しい条件を満たすために創られました。 | ||||
●サテンは第一号製品M1、M2の時代(20年以上前)から、下図のようなサスペンションワイヤーによる一点支 持の方法を採用しておりました。近頃この方法がようやくMM型でも一般化してきましたが、振動支点はなお数十 ミクロンの範囲で、再生周波数やカンチレバー(c')の振動姿態によってたえず変動し続けています。これはまこと に重大なことです。なにしろレコード溝の最大振幅ですら30ミクロン程度です。レコード再生の基準が数十ミクロ ンも変動したのでは、その1/1000程度のレコードの雑音レベル以下の再生などまともに出来る筈がありません。 | ||||
●サテンの従来製品は、このサスペンションワイヤーの長さを、 一般には1mm程度であるのを0.3mm(300ミクロン)程度にして、 支点の移動範囲は数ミクロン程度におさえていたのです。 ● そこで写真に示すように、レコードのカッターヘッドには以前よ り採用されている、直角に交わる坂バネ(a) と、それが前後に移 動するのを規制するテンションワイヤー(b) とによって、カンチ レバー(c) の回動支点(p) を、 厳密に一点化する方法をM―117 では採用しました。カッターへッドは、数KW程度の音響出力で 強制冷却しながら使用するものですから、かなり大きなガッチリ したもので、価格についても無制限と考えられますからこの一点 支持機構の採用を実現しやすいのですが、カートリッジに(マッ チ棒の断面より小さい空間に針交換可能な形式として)このカッ ターヘッドと同様の一点支持機構を組込むためには、幾多の困難 を克服しなければなりませんでした。カッターヘッドより一桁小 さいだけに、その精度を一桁上げる必要があり、その精度を2〜 3ミクロン以内におさえ、しかもこれをどうして安定に量産する か、というような問題がありました。 ●直角に交わる板バネ | (初期のカタログの写真は微妙に異なります) | |||
(a) は、一枚の厚さ35ミクロンの板より切り出されており、カンチレバー(c) の回動中心は、その中の一点(p) に 厳密に一点化され、しかもカンチレバー(c)は、その一端が管の全周で完全に固着されているのでカンチレバー(c) のその軸のまわりの回転は全く起きません。カンチレバーのその軸のまわりの回転はクロストークの原因となりま すから、絶対に起きてはならないものです。従来のサスペンションワイヤーのみのカンチレバー(c')は、カンチレ バーの回転に対しては全く抵抗するものがないので、容易にカンチレバーの回転振動が起き、クロストークが起き やすいのです。ところが、 M―117で採用されているテンションワイヤーは、前述のように直角に交わる一枚の板 バネが決める平面内の一点に厳密に定められるカンチレバーの回動の中心が、前後に移動するのを止めるだけに使 用されています。板バネで平面内の一点は定まり、その前後の移動はテンションワイヤーで止められるので、カン チレバーの回動の中心は完全に厳密に一点(p) として固定されるのです。 ●板バネは、その板の面内の変形は おきませんが、板バネに直角な方向の力に対して容易に変形され(曲げられ)、又、板バネの両端でねじるときは、 曲げるときと同じ程度に容易にねじられます。この結果カンチレバーは、その先端の針先において上下・左右・な なめ・どの方向にもやわらかく回動させることができるのです。 | ||||
M―117で音楽を再生すると、どのように聴こえるか。
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●色々と従来のものに比べ異色の特徴がありますが、次の二つの大きな特徴がM―117 によってはじめて得られま した。 ●今までのステレオでは、ステレオ感覚が得られるのは、左右のスピーカーの中央の前方のかなり限ら れた場所だけで、その位置からはなれたり頭を急に動かしたりすれば、ステレオ感がなくなったり、音像が逆に移 動したように感じたりしますが、M―117 では、室の中を自由に歩きまわっても音像の定位は全く変化せず、スピ ーカーに背を向けているときでも何等不自然な感じがしません。 ●これは大きな画期的な進歩で、M―117 で はじめてステレオというものが完成されたともいえます。ことに近頃は聴く場所を制約せずにステレオを楽しむこ とが多くなりましたので、もっとも大事なことです。 ●このことからも、M―117 の抜群のクロストーク特性 とあいまって、カンチレバーの回動支点を厳密に一点化するのが如何に大切かがわかります。 ●もう一つのM ―117の特徴は、演奏される楽器そのものの個性や、演奏者や歌う人の人間までが感じられるということです。これ らを感じさせる情報は、レコードの雑音レベルの、その値は非常に小さいが圧倒的にその数が多い周波数成分にあ り、これを取りこぼさないでまともにピックアップするかどうかにかかっているのです。そして、磁性体が磁化さ れるときは、ある程度以下の小さい信号では磁化されずじまいになって、その信号は出力として出てこなかったり するので、発電素子には、磁性体を巻芯に使用しない純粋な可動線輪型(MC型)とすることと、制動には、ゴム はある程度以下の力では変形せずじまいになってそのような小さな信号はとりこぽしてしまうので、ゴムを使用し ないこと、そして、M―117 ではじめて採用された真に厳密な一点支持機構とによって、その背後に人間を感じさ せる音楽再生がはじめて可能となったのです。 | ||||
どの機種にするかを決めるについて
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●M―117, M―117E, M―117Xは、0.5ミル円針、0.2×0.8ミル楕円針、0.1×2.5ミルコニック針(シバタ針) と針先が異なるだけではありません。ボディーの発電部などもそれぞれ異なり、交換針はそれぞれ互換性がありま すが、それぞれの組合わせが最良の結果が得られるような組合わせとして作られ、発売されています。交換針につ いても針先が異なるだけでなく、カンチレバーの形などもそれぞれ異なっています。 ●M―117 Xも4ch専用 ではなくて、2chでもM―117 シリーズ中最良の結果が得られるものですから、御予算のゆるすかぎり高価機種を おすすめします。しかし最も低価格のM―117 でも、このカタログに述べられている総べての音質や品質を完全に そなえていますから、最もコストパーフォーマンスの高いものです。 | ||||
M―18 シリーズについて
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●サテンM―117 シリーズに続いて、すべてに更に最高最善をつくしたM―18シリーズがあります。M―18は、発 売以来十年にわたって今も御愛用いただいている方が多いM8の、その名をつぐにふさわしいそれ以上のものとし て名付けました。音楽再生の可能性の極致をきわめられたい方に絶対の自信をもっておすすめいたします。 | ||||
M―117 シリーズ
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カタログでは,規格,交換針,価格,が横3列に並んでいますが,横スクロールは避けた方が良いので変更しました.取扱説明書では, となっています(M-117X も 40Ω).インピーダンス 40Ω | ||||
M―18 シリーズ
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このカタログ裏面の詳細な技術解説「つねに30年先を予見してきたサテン そのサテンがこの5年の歳月を基盤についに新製品」
M-117/M-18 は製造時期によって3種類あるようです.
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また,針ホルダーを前方から見るとゴムの栓のようなものが付いているものと,ないものがあります.ハイファイ堂のサイトより
これはホコリが入りにくくするための改良で,塚本社長から伺った話です.喫茶店を例に挙げられて,内部にほこりが入ると(確か,高音域の低下や左右の出力バランスが崩れる?)分解掃除をする,M-117/M-18(から)はこの栓のようなものでホコリが入りにくくなっている.
私の M-117E, M-18BX の外箱は縦長の発泡スチロール製で,北山杉のイラストの紙(緑色)が貼ってあり,プラケースは M-14 のものと同じですが,オークションに M-20/21 と同じ外箱・プラケースの M-117 が輸出仕様として出品されていました.FINAL INSPECTION カードは不鮮明でしたが Ide と Nishi と読めなくはないです(私の 117E, 18BX は井手さんと西川さんの印鑑,21B, 21P は別の方の印鑑).商品説明には「M-117の交換針は海外では新品が手頃の価格で入手可能です」とありました.(3/24/11) |
ドイツの中古オーディオ販売サイト audioscope.net の M-18BX も M-20/21 と同じ外箱・プラケースです(説明書に記載されている "Dynamischer Tonabnehmer" の英訳は Dynamic Pickup).これらの M-117, M-18BX と M-117Z の出力ピンは後期(上記)になりますが,日本でも後期のものは M-20/21 と同じ外箱・プラケースだったのかもしれません.