カタログのアレンジとは変えています.
とくに解説文は横に3列ですが,
横スクロールは避けた方が良いので
縦3行に変更しました.(以下同様)
つねに30年先を予見してきたサテン
そのサテンがこの5年の歳月を基盤に
 ついに新製品。─────────
M-117


(カタログは「10倍」)
カッターヘッド 従来品 新製品
(カタログは「実物大」)
8 テンションワイヤー
9 板バネ
7 ●支点移動を少なくするためにテンションワイヤーをいくら短かくしても、物体には必らず長さがあるので、回動支点は厳密には一点とならない
この長さの範囲内でどこででも曲げられる。
1 ●張力(引っ張る力)だけを受け持たせるため、テンションワイヤーは長い方がよい。
2 ●2枚の板バネとテンションワイヤーの三つの中心線の交点として、回動支点は厳密に一点となる。
3 ●針先が45°方向(矢印)に動く時
4 ねじられる
5 曲げられる
6 ●幅をもった直角に交わる板バネに規制されるため、カンチレバーの軸のまわりの回動は全くない。

 未来を予見し、純粋カートリッジのみを追求してきたサテンが、初めてダ
ンパーゴムを取り去ったM−15、M−14(1970)以来、実に5年ぶりに、
新製品を発表することになりました。このM−117は、サテンが純粋カー
トリッジを目ざす線上において、より飛躍がなされたものであり、単なるマ
イナーチェンジとは異にし、その進歩は、サテンの現時点までの最高の技術
を集約したものと、言えます。すなわち、M−117には、幾多の技術ポイ
ントが込められているわけですが、今回は、その最大のポイントを説明して
みましょう。
 『振動系の振動支点が厳密に一点に決定し、かつ振動系カンチレバーのそ
の軸方向回りの回転運動が無くなったこと』サテンが純粋カートリッジを追
求するために今まで行ってきた措置(アルミリボン線スパイラルコイルに
よる高出力磁性材を追放した空芯ムービングコイル粘弾性材であるゴム

を追放した制動機構その他の know how)が、このポイントにより、
始めて本質的に生かされることになったのです。言いかえれば、このポイン
トが、今までの技術に単につけ加ったといったものでなく、真に
今までのサテンカートリッジを大きく飛翔させるポイントなのです。
 たしかに、サテンは、この支点の明確さの重要性を、サテンの第一作M−
1から一貫して主張し、そしてそれなりの手法(テンションワイヤーでカン
チレバーの基部を引っ張る)を、M−14まで行って来ました。そして、近頃
になって、一般にもこのことがある程度認識されてきて、MM型でもテンシ
ョンワイヤーで引っ張るものが増えてきています。
 しかし、この手法も、レコードの溝のオーダーからみると、厳密に支点を
一点に決定しているとは言えないのです。今までに、この支点を厳密に決定
する唯一のものとして、カッターヘッドの支点機構がありました。だから、
これを実現するには、カッターヘッドの機構を、カートリッジに採用しなけ
ればならないわけです。ところが、カッターヘッドとカートリッジとでは、
その大きさが、スピーカーとマイクロホン程の違いがあり、この支点機構を
カートリッジにくみ込むことは、サテンにとっても大変困難なことでした。
 この5年の重みを背負ったM−117にして、初めて、この支点機構を採

用できることになったのです。M−117では、これを3mmの立方体(米
粒程)よりも小さな小ささの中に、しかもワンタッチで針交換可能な交換針
の内部に、量産的に組み込むことに成功しました。
 先程述べた、テンションワイヤーによる支点機構では、支点が厳密に定ま
らず、またカンチレバーが軸の回りに回転すること、今回サテンで採用した
支点機構では、支点が厳密に定まり、かつカンチレバーの回転が無い事は、
図に示されています。
 今までのテンションワイヤー型式では、M−14、M−15等サテンの最良の
ものでも、数十μの支点変動があり、わずかながらカンチレバーの回転も存
在します。安易に考えると、これはわずかの量であり、無視できるオーダー
であると思えます。しかし物事は厳密正確に考えてみるべきです。『レコー
ドには、通常振幅レベル数十μに重畳して、その1/1000程度の振幅レ
ベルすなわち数十mμが刻みこまれており、これを完全に再生するべき振動
系カンチレバーの振動回動支点が、その1000倍ものオーダーで変動し、
かつカンチレバーが回転したのでは、求めるレコードのまともな完全再生は、
根本的に不可能になる』このことは、おわかりになると思います。
 ──他の数々の技術ポイントについては、次回以降をお楽しみに。

初期のカタログには,M-117 の文字の左に,
¥12,500ボディー
¥10,000
0.5ミル交換針
¥5,000
という宣伝文句と,M-117 シリーズの価格が載っています.
つねに30年先を予見してきたサテン
そのサテンがこの5年の歳月を基盤に
ついに新製品。

厳密性の高まり

M-117

ab
ab 100μ×10μアルミリボン線
Fig.1 概念図
(a)針先とレコードとの接触点。
(b)振動伝達アーマチュア接触点。a,b,c,d,は同一直線(回動軸f)上にある。
(c)直角に交わる板バネeとテンションワイヤーdで構成される一点支持機構の支点。
(d)35μtベリリウム銅材テンションワイヤー
(e)40μtベリリウム銅材板バネ。
(g)ヴァーティカル・トラッキングアングル 20°
Fig.2
(a)従来のアーマチュア。
(b)M−117 のアーマチュア:50μtベリリウム銅材。
(c)コイル結合部:ループ状をなし、電磁制動が有効にかかる。アーマチュアとコイルは同一平面上にある。
Fig.3
(a)従来のスパイラル・コイル
(b)M−117 のスパイラル・コイル:アルミリボン線aの有効率1/3と比べ、bは有効率1/2と高い。質量はaと比べ1/2に減少。
Fig.4 M−117 のクロストーク特性の一例
10KHzまで−40dB 以下 50KHzでも−35dB

 サテン提出のM−117 支点機構により初めて具象化された命題「振動系の
振動支点が厳密に一点に決定され、かつ振動系カンチレバーのその軸方向回
りの回転運動が無いこと」は、新製品M−117 の最高の成果であり得ます。
                       ・・・・・
 従来の支点機構では、支点の明確性を意図した最良のものでも、数10μオ
ーダーの支点変動とカンチレバー回転が生来的に存在し、「レコードには、
平均振幅レベル 数10μに重畳して、その1/ 1000程度の振幅レベル すな
わち 数10ミリμが刻みこまれており これを完全に再生するべき振動系カ
ンチレバーの振動回動支点が、その1000倍ものオーダーで変動し、かつカン
チレバーが回転したのでは、レコードのまともな再生は、根本的に不可能に
なる」ことを考慮すると、前記の命題は、レコード再生の最低の条件である
からです。                     ・・・・・
 この最高の成果を全うするため、幾多の技術ポイントが、M−117 には集
   ・・・・・

中されています。一点支持機構とともに、これらすべてが総体的に、サテン
カートリッジの意味(ゴムも鉄も使わない純粋カートリッジ)をより明確に
し、サテンカートリッジは新たな段階をむかえたのです。今回は、そのうち、
針先からコイルまで(レコードの情報をとり出し電気系に変換するまで)に
ついて、説明してみましょう。
 ●針先チップとカンチレバー:一点支持機構の完成に従って、針先チップ
とカンチレバーには、より大きな厳密性(ミリμオーダー)が要求されます。
これに答えて、M−117 では新たな検討が加えられたものとなり、その一例
を(fig.1)に示します。その結果は、従来の安易な常識とは反する事項もあ
り、その詳細は後の機会に。
 ●アーマチュア:45°方向のベクトル分解をより厳密にし、実効質量をよ
り小さくするため、アーマチュアの動作原理とそのパターンに、一層の進化
が計られています(fig.2)。
 ●アルミリボン線空芯コイル:有効長を大きく、質量を小さくするため、
(fig.3)の形状を採用。
 なぜこれ程までの厳密性を、サテンでは追求するのか。 それは未来を予
見するサテンが、真の音楽再生に導く唯一の道は厳密でまともな再生にある、
と考えてきたからです。音造りを拒否し、より以上の厳密性を目ざす姿勢は、

この考えに裏づけられた姿勢であり、これはサテンが一貫してとってきた姿
勢です。  そして、このM−117 になって、初めて、 不充分な装置でも、
サテン純粋カートリッジの存在理由を実感できるまでの厳密性を、獲得した
のです。これは、装置を含めたオーバーオールの厳密性が、人間の閾値(こ
の値をこえると人間の耳では違いを区別することができないという値)を超
えたからです。
 サテンでは、厳密性を追求したサテン試聴室の装置でのみ聴くことのでき
る音楽が、あなたの装置でも聴くことができたとしたら、どんなにすばらし
いことであるかと、実は今まで思っていたのです。それが M−117 の段階
にいたって、とうとう現実のものとなりました。カートリッジ以外のアンプ
やスピーカーに残されている障害を突破して、あふれるばかりの音楽を、あ
なたの耳にダイレクトに伝えます。これこそサテン十数年来のねがいだった
のです。
 アンプ・スピーカーの非厳密性を、オーバーオールで無にしてしまうM−
117 の類まれな厳密性、その一端を(fig.4)のクロストーク特性で見るこ
とができます。この今までは想像することもできなかった程見事なカーブで
さえ、 M−117 の厳密性ゆえに、副次的に得られたものであるにすぎない
のです。

つねに30年先を予見してきたサテン
そのサテンがこの5年の歳月を基盤についに新製品。
M-117

I

II
III

■カンチレバー振動系支点の厳密な真の一点化機構、すなわち今まではディス
 クカッターヘッドのみが採用してきた、板バネ(トーション機能とベンディ
 ング機能)2枚と、テンションワイヤー(テンション機能)1本とによる方
 式(この3素子の中心線が互いに垂直に交わり、その交点として、空間上の一
 点を決定する)を、人類がはじめて、ディスクピックアップカートリッジの
 交換針において実現したのが、このM−117なのです。M−117をM−117に決
 定づける、この代表的な技術ポイントの視点から、振動系アーマチュアや
 ムービングコイルにも真の厳密化が計られ、そしてその延長上として、さら
 に針交換機構にも、新たな画期的コロンブス卵的方式がとられています。
■サテンタイプMC型だけが、唯一の針交換可能MC型であり、これは、音を
 穢すトランス不要の高出力とともに、サテンタイプの他に類例を見ないメ
                                   ・
 リットでした。そしてM−117では、「MC型が生来的に持つ磁気回路の磁
 ・
 力によって、交換針をカートリッジ本体に固定する技術」が開発され、今ま
      ・・・・・・      ・・・・
 で以上に「絶対確実厳密で、しかも簡単容易な針交換」を可能にしています。
■本来、交換針とカートリッジ本体とは、剛体として一体化されている必要が
 あります。この必要条件が満たされないと、再生音に重大な悪影響を与える
 ことは、シェルやアームを変えると音が変化することからもわかるように、
 明白な事実です。 ●ところが、MM型などのように、弾性(バネ)を効か
 せて交換針をとめる方法では、どんなに強いバネであるとしても、《力が加
 わると、その力の大きさに比例して変位する》という弾性(バネ)の本質が
 その剛体化を不可能にします。一般のカートリッジでは、交換針クランプを
 指先で横にゆするとグラグラ(実に1〜1/10mmのオーダーで)することか
 らも、交換針はあいまいに本体とくっついているだけであることがわかるで
 しょう。 ●M−117の磁石による方法では、《磁石と磁石とは、磁力で吸

 着し剛体として一体になっているか、それとも全く離れているか、その二通
 りしかない》ため、その剛体化は、接着材で固着した(針交換不能の固定針
 タイプ)以上に完全無比です。 ●この交換針固定方法が、M−117の一点支
 持機構とともに、カンチレバー振動支点の真実の一点化(mμすなわち1/1000000
 mmオーダー)の基盤となっているのです。  ●しかも針交換は、MM型よ
 り容易。そしてアーマチュア・ガードがカートリッジ本体の振動系を完全に保
 護し、交換の際のトラブルはあり得ません。
■●Fig(I):カートリッジベースA。磁気回路B(マグネット、ヨーク
 ポールピースで構成される)。交換針C。交換針Cは、ポールピースに
 刻まれた溝に、磁気回路Bのストレイフラックスの磁力で、固定される。こ
 のとき、交換針の位置は、2μの精度をもつ溝との嵌合により、数μの精度
 で規制することができる。
 ●Fig(II):交換針C。カートリッジカバーD。カートリッジカバーDの一
 部であるアーマチュア・ガードが、内部の振動系を完全に保護する。交換
 針Cは、ポールピースの溝とだけ結合し、カバーDとは、0.15mmの間隙を
 有して、無接触である。
 ●Fig(III):交換針Cの底面。 磁気吸着用磁性体aが、ポールピースと
 の剛体化に働く。同じく、bは、カンチレバー振動系一点支持機構を、磁力
 により、カートリッジ本体に固定する機能を持つ磁性体。
 (註:上記磁性体は、あくまで剛体結合化のための磁性体であって、発電系
 には一切磁性体を含まない空芯MC型であることにかわりはない。)
■厳密性の追求によって結実したM−117は、今までのサテンにもない、(そ
 して勿論……にもない)、確かでそして豊かな音楽の情報量をもたらします。
 M−117の圧倒的な情報量は、不充分な装置でも、オーバーオールでその不

 充分(非厳密)さを突破して、圧倒的にあふれるばかりの音楽を聴かせてく
 れるのです。「サテンに見合った大型装置でないと、音造りを排除したサテ
 ンカートリッジは、充分に使いこなせない。普通の装置では高域が勝った
 バランスになってしまい、サテンを普通の装置で使うのはもったいないこと
 だ。」という、今までの少し面映くもある御批判も、もうM−117には通用
 しません。普通の装置でも、大型装置と同様に、聴感的なエネルギーバラン
 スが全くフラット、そして、楽器の確かな定位と生きいきとした臨場感、S
 Pの存在を離れて空間に音のイリュージョンをむすびながら部屋中にただよう
 音楽のアンビアンス、これは、M−117の超高域までフラットなF特、そし
 てとりわけすぐれた高域のクロストーク特性、そのものです。
■厳密性の高まりであるサテンM−117は、サテンにとっても、自信をもって
 125,000円の価格をつけられるカートリッジであるにちがいありません。し
 かし、多数の音楽愛好者に、あふれる音楽をお届けしたく、努力に努力を重
 ねて、定価は12,500円。これには、厳密性追求の過程で得られた2μ精度
 の金型、その量産効果も、大きな役割をはたしています。オーディオを通じ
 て音楽にダイレクトにふれあいたいと願う人間が、この地球上に一人もいな
                               ・・・・
 かったとしたら、一見ばかばかしいこれ程までの厳密性の追求を、サテンは
 ・・・・
 しません。      ●M-117 ¥12,500 M-117E ¥17,500 M-117X ¥21,000
(価格リスト↑は初期のカタログのみ)

(初期のカタログの下のカートリッジは M-18 で,
SATIN 文字の上に以下の価格表があります)
M-117  ¥12,500 円  針
M-117E ¥17,500 楕 円 針
M-117X ¥21,000 CONIC 針
M-18   ¥22,000 円  針
M-18E ¥25,000 楕 円 針
M-18X ¥32,500 CONIC 針
M-18BX ¥42,000 CONIC 針
 大願とは、私どもサテンの試聴室でのみ聴くことのできるレコードのこのすばらしい再生音楽を、どなた様に
も御自分のステレオ装置で聴いていただきたい、という、私の十数年来の切なる願いでした。私のところでの再
生音楽は、単位時間あたりに装置が伝送する圧倒的に大きい音響情報量がもたらす、様々な楽器音の時間的にも
息づく多様さと、演奏者の生身の個性的表現に彩られたオリジナルの音楽性の確かな再現であり、それはそれは
           ・・・・・
部屋いっぱいにあふれる人間の音楽です。 ▼M−117はこの願いをはじめてかなえてくれました。 ▼その確
かな、そして今までのサテンカートリッジに比べても桁ちがいに豊かな情報量が、サテン試聴室以外の装置でも
オーバーオールで突きやぶってなお出てくるからです。これによってカートリッジ以外はそのままで、レコード
にはこんなにすばらしい音がはいっていたのかと、音楽をきくよろこびを新たにしていただければ、私事ながら
サテン社員一同のよろこびもこれに過ぎるものはありません。 ▼サテンM−117シリーズに続いて、総てに更
に最善をつくしたM−18シリーズがあります。M−18は、発売いらい十年にわたって今も御愛用いただいている
方が多いM8の、その名をつぐにふさわしい以上のものとして名付けました。 ───SATIN 京 都──

このカタログ表面「レコードの材料分子1個を踏んでも感じる M-117 M-18SATIN Top へ戻る