トーンアームは何故揺れるのか 揺れる原因は大別して次の四つがあります。 1 レコードの偏心とそり、これは耳できこえる音よりかなり低 い周波数成分を主とするものです。 2 レコードの溝が音楽によって上下左右に蛇行しているため。 3 トーンアームのどの場所にも特に水平回転軸及垂直回転軸に 極微小でもガタツキがあるとき。 4 トーンアームを構成する各構造部分が自由振動を起こして鳴 っている場合。 2ボール式3点支持アームの説明図 | 1 について これは説明する必要がないと思います。 2 について これはさらに二つに別けて考えるべきもので、その一つはカートリ ッジのメカニカルインピーダンスのために針先が溝から反作用とし て音響振動的な力をうけるためで、これには録音された元の音の周 波数成分以外の成分は含まれていません。これはレコードでなくて バイブロメー夕ーという機械にレコードの無音溝の微小片をはりつ けてこれによって針先を上下左右に振動させた場合のうける力と同 じものです。 ところがもう一つはレコードによって針先が上下左右に振動される 場合はこれと全く異なり、針先とレコードの溝は相対的にたえず滑 っていることと音溝が変調されているときは、針先が接している溝 面が無音溝のときよりその傾きが必す変化することです。 針先がレコードに接する二点の溝面に垂直な方向を法線といいます が、その法線の方向が音響波によって時々刻々変化することです。 そして針先は、溝からこの二つの法線方向の力を受けており、その 垂直成分の合計が丁度針圧と等しいものです。垂直成分は常に一定 でも法線がたえず変化すればその水平成分はたえず変化して、結局 法線方向のうける力の合計はその大きさも方向も、音響波につれて 時々刻々変化します。又法線に直角な溝面と針先とが相対的にすべ る接線方向も時々刻々変化し、その法線方向の全圧力も変化し、摩 擦力は全法線庄力に比例するので、その滑り摩擦力も時々刻々変化 します。しかも悪いことにこの場合の力の周波数成分は、元の音響 波の周波数成分と全く異なるものを含んでいます。 そしてこの法線方向の全圧力と摩擦力の大きさの上下及び左右の変 化量はカートリッジの針圧の10%〜20%程度です。但し、法線方向 全圧力の前後方向成分の変化量は、針圧とほぼ等しい大きさになる ことがあります。 このようにカンチレバーの前後方向は特に変化が大きいので、アー ムの回転能率のうでを零にするため、AR−1M、AR−1Sには、 針先即ちレコード面にアームの上下動支点を正確に一致させるため に、5μの精度で上下動支点の高さを調整する装置があります。 二つの90°円錐に上下から挟まれた球は、それぞれ円形の線で接触し ます。そして球の半径をRとしますと、円形の半径はR/√2となりま す。R=0.75mmのときはそれはR/√2=0.5033mmになります。 AR−1の可動部の総重量は約280gで、円錐と鋼球の静上摩擦係数 は0.115で法線は45°方向であるので、全法線方向の圧力は 280g×√2≒396gになり、396g×0.115=45.6gの静止摩擦力が円形の 線上に作用します。よってアームを水平に回転させるためには 45.6g×0.5033mm=22.95mmgの回転能率が必要です。ところがAR− 1カンチレバーの方向の水平回転実効長は250.5mm×cos21.5°=233mm ですから 22.95mmg÷233mm=0.0985g 以上の力を針先においてカ ンチレバーに直角に加えないと、アームは回転をはじめません。そ | |
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