最高の音楽性は元の演奏の中にのみあります。

 オーディオ機器を製造する場合、どうせ元の演奏を全く変化させ
ずに再主することは不可能であるので同じ変化するなれば人間が聴
いて好ましいものにするという立場と、人間の聴覚にとって必要な
ものは極力変化させないようにする立場とがあります。
 サテンは一貫して後者の立場に立っております。それは前者の場
合はどのレコードもある楽しさで聞くことはできますが、もはやそ
れ以上のものはありません。その好ましさもある種の変形の結果で、
 いかなるときも元の演奏に蔽いかぶさるので元の演奏の無限の音
楽性を隠してしまうからです。しかし後者の場合は一度成功すれば同
じレコードでも聴く度ごとに元の演奏から無限に新しく音楽性の発
見をすることができるからです。しかし後者の道はこわしてはなら
ない必要最少限のものは一個所たりともおろそかにできません。

ディスク・カッターへッド原理図
ディスクカッターへッドは

(1) 空芯コイルの厳密な平行振動
(2) ゴムダンパーに頼らないモーショナルフィードバックによる電
  磁制動
(3) カンチレバーの回転を規正する直交板バスによる厳密な一点支
  持

この三つの要件を全部満たすものだけがカッターへッドの逆メカニ
ズムのカートリッジと呼べるものです。サテンM―20、M―21は厳
密にこの三つの要件を満たすものとなりました。
 単に発電子がV型に直交しているだけでは45―45ステレオ方式で
はどのカートリッジも必然的にそのような形になるものですから、
これをカッターへッドと相以であると呼ぶのは無意味です。
(1)空芯コイルを厳密に平行振動させるためには、コイルとカンチレ
バーはフレキシブルな結合にしなければなりません。コイルとカン
チレバーとを一体に固着してはならないのです。コイルとフレキシ
ブルジョイントであるカンチレバーはその軸の回りにグラグラ回動
して、振動が正確にカンチレバーに伝達されませんから、これを規
正する、直交する板バネとサスペンションワイヤーとから構成され
る厳密な一点支持機構が、カッターへッドには必ず採用されており
ます。サテンM―20、M―21は、マッチの頭より小さい中に、(3)が
厳密に実現されています。

一点支持機構
サテンMCカートリッジは、針交換できる世界唯一のものでありま
すが、単に針交換ができるという利益のためだけでなく、コイルと
カンチレバーとは、40μ厚のパンタグラフ形のバネ機構のVカット
によって、点接触させることが可能になり、完壁なフレキシブル結
合になっています。一般のカートリッジは、コイルはカンチレバー
に固着され、一点支持はサスペンションワイヤーのみが採用され、
必らずゴムダンパーが使用されております。カッターへッドにも、
直交板バネの鳴きを止めるためにゴムが使用されておりますが、こ
れはムービングコイルやカンチレバー等の振動系の全体の制動をし
ているものではなく、カッターへッドの主なる制動は、モーショナ
ルフィードバックによる、電磁制動です。もしカッターへッドの制
動はゴムに頼らないというこの事実がなければ、ディスクレコード
の音質がカッターへッドで頭打ちになってしまいますから、簡便な
ゴムダンパー使用を止めて、サテン独自の、ゴムタンバーを使用し
ない方式を開発するという、困難な道をえらばなかったでしょう。
 ゴムは、加えられる力の変化に応じて、連続的に変形するもので
はなく、力の増加がある大きさに達するまでは全く変形せず、ある
値に達すると突然変形する性質をもっており、しかもその変形に要
するある大きさの力も、ランダムにまちまちの値であり、ある程度
以上の音質が要求される音響機器には使用すべきものではありませ
ん。
 しかもゴムは変形の量、即ち変位の量に比例する制動力があり、
MCカートリッジのコイルは、速度に比例した電圧を発生するもの
で、サテンM―20、M―21のダンピングは、シリコングリースのよ
うに、シリコンオイルにリチューム石鹸を混合することによって流
失しないグリースとしたものでなく、(2)それ自身の分子間引力によ
って、流失しない特殊グリースの滑り摩擦力による、コイルの速度
に比例した制動力と、渦巻平面コイルの支持体でもある、極低抵抗
の(2)ベリリュウム銅のショートサーキットによる電磁制動によるも
のでダンピングにゴムは一切使用しておりません
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