4.5 結言
本章では,試作した計測装置を用いて,電機子巻線構造と回転子 d 軸位置検出装置の異なる 3 種類の供試発電機について,それぞれの発電機が代表的な 4 種類の負荷を担って動作している状態に対して,空隙磁束密度と内部誘導起電力などを実測し,諸問題について検討した.
空隙磁束密度分布の基本波成分を表わす点は,発電機の動作状態をよく表現しているが,本研究で開発した計測装置によって,初めてリアル・タイムに直接実測することができるようになった.A 号機に対する計測の結果は文献 8) に示された測定値などと合致していること,および表 4-2 の結果より,計測装置の性能と計測法の正当性が確認できる.
第 2 章より本章で,稼働時同期発電機の空隙磁束密度オンライン計測装置に関する研究ついて説明してきた.以下に,本研究で得られた結果をまとめておく.
(1) 同期発電機にサーチ・コイルと d 軸ピックアップを取り付ければ,本研究で開発した装置を用いて,現場で負荷を担って動作している同期発電機の空隙磁束密度の挙動,すなわち動作状態を手軽に直視することができるようになる.
(2) 一般の発電機にサーチ・コイルや d 軸ピックアップを取り付けることはそう困難ではない.また,第 2.4 節で述べたように,計測装置の構成を発電機の構造に応じて変更することは容易である.したがって,どのような発電機に対しても,空隙磁束密度を測定することにより,負荷時の動作状態を明らかにすることができる.
(3) 計測装置は一般的な部品を使っているので,低コストで容易に製作でき,機能の拡張も容易に行える.例えば,端子電圧を計測することによって内部相差角を算定したり,稼働中の発電機の同期リアクタンスの値を算定することもできる.
(4) サブ MPU は 1 周期のうち約 1/3 の時間で空隙磁束密度の計算を済ませ,残りの約 2/3 は休止している.また,メイン MPU は 1 区間の最初(NMI 処理)を除いてサンプリングしか行っていない.したがって,さらにいくつかの計算や機能を追加することができ,計測装置のさまざまな応用が考えられる.例えば,負荷時の内部誘導起電力は従来の測定器では直接得ることはできないが,計測装置ではそれに比例する空隙磁束密度分布(サーチ・コイル誘起電圧の Fourier 係数)の基本波成分の大きさとして実際に算出している(第 3.4.4 節参照).その無負荷誘導起電力に対する位相角も第 4.3 節で算出した.また,計測装置により算定された空隙磁束密度の各成分を合成し,オシロスコープや CRT ディスプレイ装置などに空隙磁束密度分布波形を(静止成分について)表示することもできる.